音も水跡も出ない“見えない漏水”をどう見つける?
-トレーサーガス調査で特定した実際の流れと判断のポイントを解説-
第3回|市川市 ➤ 第4回|酒々井町 ➤ 第5回|東金市
🔶 この記事の要点
- 千葉県酒々井町の戸建住宅で、音も水跡も出ない“静かな漏水”をトレーサーガス調査で特定。
- 水道代が急増したが、音聴調査では反応がなく、地表にも変化がなかった。
- 約1時間のガス調査で漏水箇所を特定し、掘削により配管の微細亀裂を確認。
- 修理ではVP管からHIVP管への交換を実施し、再発リスクを抑制。
- 放置していれば年間5〜8万円の損失が想定される典型的な微量漏水のケース。
- 見た目に異常がなくても内部で確実に進行する漏水のリスクと、非破壊調査の重要性を解説。
🔶 はじめに
水道料金の増加や検針時の指摘をきっかけに漏水調査を行っても、音が出ない・水が現れない状況では原因をつかめないことがあります。目に見える水たまりや振動音がない“静かな漏水”は、従来の音聴調査だけでは発見が難しく、時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。
今回の千葉県酒々井町の事例では、音聴棒や路面音聴器を用いた初動調査では反応が得られず、通常の手法では手がかりがない状況でした。こうした微細漏水に対しては、構造物を傷めずに特定できる「トレーサーガス調査」が有効です。
記事では、音も出ず、水も表れなかったこの現場で、どのようにして漏水位置を特定し、修理に至ったのかを具体的に紹介します。現場の進め方と調査判断の流れを、同様の症状に悩む方にも分かりやすく解説します。
🔶 もくじ
- 第1章|見えない漏水にどう気づいたのか(依頼の経緯)
- 第2章|音も水跡も出ない現場で何が起きていたか
- 第3章|調査の流れ(ハイブリッド調査で特定)
- 第4章|漏水箇所の特定と修理内容
- 第5章|ハイブリッド調査の実際(トレーサーガス+音聴の組み合わせ)
- 第6章|放置した場合のコストと二次被害(料金シミュレーション+目安)
- 第7章|調査で得られた知見と今後への応用
- 第8章|再発防止を見据えた施工設計と仕上げ
- 第9章|まとめ・さいごに
🟩 第1章|見えない漏水にどう気づいたのか(依頼の経緯)
最初のきっかけは、水道検針員からの「前回より使用量が大幅に増えている」という指摘でした。建物は千葉県酒々井町の築40年以上の戸建住宅。ご家庭では「水の出方や勢いは普段どおり」「耳を澄ませても音がしない」「庭や床下も濡れていない」とのことで、外観からは漏水を疑う材料が見当たりませんでした。
一方で、メーターの確認は見逃せない手掛かりを与えていました。すべての蛇口を閉めてもパイロット(銀色の羽根)がわずかに回り続けており、日常使用がないのに水が流出している兆候が読み取れました。こうした“見えない・聞こえない”状況は相談が遅れやすく、家計と建物双方への影響が長期化しがちです。
🟦 初期の状況(外観・聴感に異常なし)
現場での初回確認では、次のとおり目に見える異常や聴感上の手掛かりは得られませんでした。
- 水の出方・勢いに変化なし
- 耳を澄ませても漏水音なし
- 庭・床下の湿りや水たまりなし
👉 外観・聴感では「異常なし」と見えてしまう典型的な出だしでした。
🟦 唯一のサイン(メーターパイロットの微動)
同時に、漏水の存在を示す明確な兆候が次の点で確認できました。
- 全蛇口を閉止してもパイロットが微動し続ける
- 連続的な微動=どこかで常時流出が発生
👉 日常使用がないのにパイロットが回る場合、漏水の確度が高い指標となります。
🟦 ご依頼時の懸念(費用・工事範囲・方法)
ご依頼者さまから共有いただいた主な懸念は以下でした。
- 水道代がこのまま増え続ける不安
- どこを開口すべきか見当がつかない
- できるだけ破壊を抑えて特定したい
👉 このため、非破壊で確度の高い方法を優先し、段階的に調査を進める方針を設定しました。
🟦 まとめ
状況を整理すると、ポイントは次のとおりです。
- 検針で使用量の急増が判明
- 外観・聴感では異常が見えない
- メーターの微動が唯一のサイン
- 通常の初動だけでは特定が難しい
- 非破壊かつ高感度の調査方針を採用
🟩 第2章|音も水跡も出ない現場で何が起きていたか(現象の背景)
漏水というと「水が噴き出す」「音で気づく」と想像される方が多いですが、実際には音も水跡も出ないまま静かに進行するケースがあります。今回の現場は、まさにその典型でした。このような現象は、いくつかの条件が同時に重なることで発生します。音・見た目・水圧のいずれにも異常が現れないため、通常の音聴調査や外観確認では限界があり、最終的にトレーサーガス調査を導入しました。
🟦 音がしなかった理由
現場では、配管内で音が発生しない条件が揃っていました。以下の要因が重なり、聴感ではまったく異常を捉えられませんでした。
- 漏水量が少なく、水流が乱れなかった
- 水圧の変化が小さく、蛇口の勢いも安定
- 配管内で摩擦が起きず、音聴器でも反応が得られない
まとめると、漏水量が毎分数百ミリリットル未満とごく微量だったため、配管内に“乱流”が発生せず、音聴調査では完全な無音状態でした。
🟦 水跡が出なかった理由
次に、水が地表に現れなかった理由です。今回の配管はコンクリート下の粘土層に埋設されており、漏れた水が地表まで上がってこない構造条件でした。
- 配管はコンクリート下の粘土層に埋設
- 粘土質の地盤が水を吸収し、地表に現れない
- 湿りもなく、目視では確認不能
このような条件では、漏れた水が地中で滞留し、「音も濡れも出ない」という発見が最も難しい状態になります。
🟦 見落とされやすい背景
さらに、このような“静かな漏水”が発見を遅らせる背景には次のような要因があります。
- トイレ系統など、通水量が多い配管では圧力変動が小さい
- 蛇口の出方が変わらず、「問題なし」と思い込みやすい
- 検針による使用量の増加が発見のきっかけになることが多い
実際、通水量の多い設備ほど、異常に気づきにくく長期化する傾向があります。
🟦 まとめ
今回の現場では、外観・音ともに手掛かりがなく、通常の音聴調査では発見が難しい状況でした。
下記のような条件が重なったことで、漏水が“静かに進行する”典型的なケースとなりました。
- 漏水量が微量で音が出ない
- 地盤が水を吸収して地表に現れない
- 圧力変化が小さく、蛇口も異常なし
- 視覚・聴覚で判断できない典型条件
- 精密機器によるトレーサーガス調査が有効
🟩 第3章|調査の流れ(ハイブリッド調査で特定)
今回の現場は、コンクリート下・粘土層・音の出ない漏水という3条件が重なり、単一の調査方法では決定打を得ることができませんでした。そのため、屋内外の音聴調査で基礎情報を集めたうえで、最終的にトレーサーガスと路面音聴を組み合わせたハイブリッド手法で漏水位置を特定しました。
以下では、実際に行った調査手順とその結果をまとめます。
🟦 ① 屋内調査(音聴・機器点検)
屋内では、水回り設備や給水・給湯配管の異常有無を確認しました。その際に確認した主な項目は次のとおりです。
- 1階・2階の各水栓、トイレ、洗面、浴室、洗濯機水栓の順に点検
- 小型音聴器を使用し、配管・バルブ部の漏水音を確認
- 給湯器周辺の止水・通水動作をチェック
🔷 調査結果の要約
どの設備からも異音はなく、漏水を示す反応は確認されませんでした。屋内機器や給湯系統に問題がないことから、漏水は屋外配管側にあると判断しました。
🟦 ② 屋外調査(路面音聴)
次に屋外の配管系統を対象に、地中の振動・音圧を確認しました。その際に確認した主な項目は次のとおりです。
- 建物外周のコンクリート舗装上から路面音聴器を使用
- 外水栓や給湯器付近など、音が伝わりやすい箇所を重点的に調査
- 地表の湿りや陥没、ひび割れなどの変化も併せて確認
🔷 調査結果の要約
コンクリートの厚み(約20cm)と粘土層(約40cm)の影響で音が減衰し、地表まで振動が届かず、音聴反応は得られませんでした。漏水は地中深くで発生しており、従来の音聴調査では特定が困難な状況でした。
🟦 ③ トレーサーガス調査(単独)
音が出ない環境では、ガスを用いた非破壊調査が有効です。そこで、配管に安全性の高いトレーサーガスを注入し、地表のガス濃度を検知して漏水箇所を推定しました。
- 配管を閉止し、圧力を調整しながらトレーサーガスを注入
- 舗装の継ぎ目やバルブ部、コンクリートクラックなどを検知器で確認
- 地表でのガス反応を複数地点で計測
🔷 調査結果の要約
粘土層の密閉性によりガスの上昇が妨げられ、明確な反応は得られませんでした。単独では漏れ範囲の特定にとどまり、次の段階への移行を決定しました。
🟦 ④ ハイブリッド調査(ガス+音聴併用)
トレーサーガス注入と音聴調査を同時に行う「ハイブリッド手法」を採用しました。この方法では、ガス漏出による微小な「ガス音」を路面音聴器で聴取し、音の出ない漏水を“ガス音”として捉えることができます。
- トレーサーガスを一定圧で注入し、音聴器でガス漏出音を聴取
- 屋外配管全域を再スキャンし、音圧反応とガス濃度を比較
- 反応が強い地点を重点的に再測定
🟧 関連解説
調査で使用する音聴機器やトレーサーガス検知器の特徴、そして両者を組み合わせたハイブリッド調査の流れを紹介しています。
・音聴機器の仕組みと使い方
・トレーサーガス機器の仕組みと使い方
・ハイブリッド調査(ガス+音聴併用)の実施例
🔷 調査結果の要約
浴槽給水管の継手部と、2階給水用ゲートバルブ本体からの反応を確認。両箇所で音圧とガス濃度が一致し、確定漏水と判定しました。掘削範囲を最小限に抑え、構造物を破壊せずに特定できました。
🟦 まとめ
複数の調査手法を段階的に組み合わせることで、音が出にくい構造条件下でも漏水位置を精度高く特定することができました。今回のような「音なし・水跡なし・粘土層下」という難条件では、単独の音聴・ガス調査に依存せず、現場条件に応じて柔軟に切り替えることが重要です。
🟩 第4章|漏水箇所の特定と修理内容
調査の結果、音聴単独では検出が難しかった2箇所の微細漏水を、ハイブリッド手法(トレーサーガス+路面音聴)によって正確に特定しました。いずれも目視や聴取では反応が乏しく、従来調査では発見が困難なケースです。
以下では、各箇所の状況と修理内容をまとめます。
🟦 ① 浴槽給水管の継手部(微細漏水)
浴槽へ向かう給水管の継手内部で、肉眼では確認できない亀裂が発生していました。漏水量は毎分数百ミリリットル以下とごく微量で、水は管の外側を伝って土中に滲み込み、地表には現れない状態でした。
現場で把握した要点は次のとおりです。
- 継手内部の微細亀裂による滲みで、音も水跡も出ない
- 音聴器では反応が得られず、ガス検知で初めて特定
修理では、亀裂が生じた継手とその周辺配管を切除・更新し、VP管から耐衝撃性の高いHIVP管へ交換しました。接着部の再構成により、気密性と耐圧性を確保。配管の揺れや微振動にも強く、長期使用に耐えうる構造としています。
結果として、再発リスクを抑えた安定供給が実現し、給水ラインの信頼性が大幅に向上しました。
🟦 ② 2階給水配管用ゲートバルブ本体(滲み)
もう一箇所は、2階系統への分岐部に設けられたゲートバルブ本体からの微小な滲みでした。内部パッキンの劣化が原因で、使用頻度の低い系統では特に発見が遅れやすい典型的な漏水です。地表のガス反応や音反応が非常に弱く、ハイブリッド検出によってようやく反応を捉えました。
整理すると、確認できた事実は次の二点です。
- バルブ内部パッキンの劣化による滲み
- ガスと音圧反応の一致により位置を確定
修理では、劣化したバルブを撤去し、配管を直結構造に変更。将来的な不具合要因となる可動部を排除し、シンプルかつ堅牢な構造に更新しました。結果として通水抵抗が減少し、水圧変動が少ない安定した供給系統となりました。これにより、構造的な弱点を除去するとともに、長期的な保守性を高める改修が完了しました。
🟦 ③ 復旧工事と完了確認
修理後は、再発防止と地盤安定性を考慮しながら復旧作業を進めました。掘削や埋戻しを誤ると、再沈下や管への応力集中が起きるため、排水性と耐久性のバランスを重視しました。
復旧の実施内容は以下のとおりです。
- 粘土質の既設土を撤去し、川砂を用いて埋戻し
- 路盤は砕石で整地し、表層はコンクリートで原状復旧
- 仕上がり高さ・色調を既存部と揃え、景観への影響を最小限に調整
復旧後は耐圧試験を実施し、一定圧力を保持した状態で圧力降下がないことを確認。全工程をもって止水を完了としました。施工範囲を必要最小限にとどめ、確実な止水性能を得ています。
🟦 まとめ
今回の2箇所はいずれも「音が出ず、跡も残らない静かな漏水」でしたが、トレーサーガスと音聴の併用によって的確に特定し、最小限の掘削で修理を完了しました。構造的な弱点を残さず、配管系統全体の信頼性を高める結果となった事例です。
🟩 第5章|ハイブリッド調査の実際(トレーサーガス+音聴の組み合わせ)
音も水跡も出ない現場では、単一の調査方法だけで漏水箇所を突き止めることが難しくなります。今回の現場では、初動の音聴調査で明確な反応が得られなかったため、トレーサーガス調査を併用した「ハイブリッド手法」を採用しました。音とガスの両方の反応を照合することで、微細な漏れでも短時間で位置を特定できます。以下では、その仕組みと実施手順を順に解説します。
🟦 トレーサーガス調査の仕組みと有効性
トレーサーガス調査は、水道管内に安全なガスを注入し、地表面で専用検知器を用いて漏出反応を確認する方法です。音では特定が難しい状況でも、ガスの拡散特性を利用することで反応を捉えます。
次のような仕組みで調査を行います。
- ガス分子は水よりも小さく、微細な亀裂からも漏出する
- 地表で検知反応を測定し、濃度分布から漏水位置を推定
- 音の出ない微量漏水にも対応できる
- 掘削範囲を最小限に抑えられる
ガスが漏出する性質を利用することで、音聴調査では特定が困難な微小漏水を短時間で検出できる点が最大の特徴です。
🟦 音聴調査との併用による精度向上
ガス調査で反応を得た地点を基準に、音聴調査で再確認を行います。音とガスの両方の結果を突き合わせることで、漏水箇所の位置を高精度に特定します。
具体的には以下の手順で確認を行いました。
- 音聴反応の有無を比較し、ガス反応との相関を確認
- ガス反応が強く、音反応が弱い箇所を重点的に再検査
- 複数手法の結果を重ね合わせることで位置特定の確度を向上
音とガスの反応が一致する地点を基準とすることで、誤差を最小限に抑え、短時間で確実な判定を行うことができました。
🟦 現場での実施工程
現場では、調査精度を維持しつつ作業効率を高めるため、配管経路の確認からガス注入・検知・特定までを手順化して実施しました。
以下の流れで調査を行っています。
- 水道メーターのパイロット挙動と流量を確認
- 配管経路図や現地状況から注入位置を決定
- ガス注入後、地表の複数地点を検知器で測定
- ガス反応が強い箇所を中心に音聴調査を実施
- 反応の一致点を特定後、最小範囲で掘削・確認
地盤条件や配管深度を考慮しながら検知範囲を調整することで、掘削面積を最小限にとどめ、調査全体の精度とスピードを両立しました。
🟦 成果と考察
ハイブリッド調査の結果、単独調査では発見が困難だった微細漏水を約1時間で特定できました。
調査の成果をまとめると、次のようになります。
- ガスと音の一致反応により漏水位置を確定
- 掘削範囲を必要最小限に抑制
- 短時間で確実な止水を達成
今回の結果は、「音も水跡も出ない漏水」に対してトレーサーガスと音聴の併用が非常に有効であることを実証するものです。今後も現場条件に応じて、複数手法の併用を基本とした運用が重要となります。
🟩 第6章|放置した場合のコストと二次被害(料金シミュレーション+目安)
漏水は「少量だから大丈夫」と思われがちですが、実際には時間の経過とともに水道料金・電気代・修繕費の三方向で損失が増大します。
特に音が出ない“静かな漏水”は、気づかないうちに長期化しやすい点が特徴です。ここでは、実際の料金試算と、放置による二次的影響を整理します。
🟦 水道料金の増加試算
上下水道の合算単価を1m³あたり500〜800円とした場合、代表的な漏水量ごとの月間および年間コストは次の通りです。
- 100mL/分 → 約2,160〜3,456円/月(年間 約25,920〜41,472円)
- 200mL/分 → 約4,320〜6,912円/月(年間 約51,840〜82,944円)
- 500mL/分 → 約10,800〜17,280円/月(年間 約129,600〜207,360円)
- 1L/分 → 約21,600〜34,560円/月(年間 約259,200〜414,720円)
これらは、目に見えないほどの“わずかな流出”でも、24時間・365日止まらずに続いた場合の損失を金額換算したものです。
たとえば、毎分100mL(コップ半分程度)の漏れを1か月放置すると、約4m³=2トン車2台分の水が失われます。200mL/分ならその倍、1年で約100トン――家庭の浴槽500杯分に相当します。
音が出ない漏水でも、こうして時間をかけて積み上がると家計の固定費を確実に押し上げる“見えない請求”になります。また、検針や請求書の段階でようやく気づいたころには、すでに数万円単位の浪費が発生していることも少なくありません。このため、「音も水跡も出ない=被害が小さい」ではなく、「見えないほど危険」と捉えるのが正確です。数字上は小さく見えても、放置すれば家計と設備の双方に長期的な負担を残します。
🟦 二次的な経済負担
料金増加に加えて、次のような“副次的損失”も発生します。数字に表れにくい部分こそ、長期的に見れば家計や設備に大きな差を生みます。
🔷 温水配管の漏れ
給湯機や電気温水器が常時稼働してしまうと、知らぬ間に燃料や電力を浪費します。たとえ湯が外に出ていなくても、漏れによって圧力が下がれば機器は「お湯をつくり続ける」と判断します。その結果、月3,000〜1万円前後の光熱費上昇が続き、給湯機内部のヒーターや熱交換器にも過負荷が掛かります。長期間の放置は、機器そのものの寿命を縮める原因にもなります。
🔷 井戸ポンプの常時稼働
わずかな漏水でも圧力が下がるとポンプは頻繁に起動を繰り返します。電気代の増加(数千円〜1万円/月)に加え、モーターやスイッチの消耗が早まり、数万〜十数万円規模の修理や交換が必要になることがあります。特に深夜の自動起動を放置すると、動作音や振動が積み重なり、機械的な疲労や配線劣化を招くこともあります。
🔷 建物・地盤への影響
漏れた水が地中に滞留すると、粘土層や砂層の性質を変え、土壌が軟化します。基礎下の空洞化や沈下、床下の湿度上昇、断熱材や木材の腐朽、カビの発生など、表面からは見えない“静かな劣化”が進行します。とくにコンクリート土間や駐車場下の漏水は、水が逃げ場を失い、時間をかけて地盤そのものを弱らせていく点が注意です。
🔷 修繕費の遅延増大
漏れが小さいうちに修理を行えば、数万円で収まることが多いですが、発見が遅れるほど被害範囲が広がります。水が構造物を傷めてからでは、コンクリートの解体や配管再構築が必要となり、10万〜20万円を超える工事費に膨らむケースもあります。さらに、被害が室内や隣接敷地に及んだ場合は、追加の補修や補償が必要になることもあります。
🟦 実際のリスク感覚
毎分200mL未満の微量漏水でも、年間約5〜8万円相当の損失になります。2年間放置すれば、水道代・修繕費・機器劣化を合わせて15万円超の複合損失となることもあります。放置の長期化は、家計と設備の両方に確実な負担をもたらします。
🟦 まとめ
放置が招くコスト構造は「毎月の損失+将来の修繕費」の二重取りです。
判断材料として次の要点を押さえてください。
- 微量でも連続すれば、年間数万円規模の損失。
- 温水・井戸系では燃料費や電気代が上乗せ。
- 地盤・基礎・配管に“静かな劣化”が進行。
- 早期発見が唯一の“最小コスト解決”の手段。
検針やメーターのわずかな動きが、重大な損失を防ぐ最初のサインになります。
気づいた段階で専門調査に進むことが、家計と建物の両面で最も確実な節約です。
🟩 第7章|調査で得られた知見と今後への応用
今回の調査を通じて得られた要点は、今後の類似現場にも応用できる重要な知見となりました。特に、遮音構造や粘土質地盤といった不利条件下で「音も水跡も出ない漏水」にどう立ち向かうかという点で、現場的な指針が整理されています。
現場対応から得られた主な知見は以下のとおりです。
- 音が出ない場合でも、配管材質・継手形状の違いでガス反応の出方が変わる
- ガス調査は「拡散の道筋」を読むため、管経や埋設深度の情報が精度を左右する
- 音聴調査はあくまで補完的に用い、反応の一致を見極めることが精度向上の鍵
- 修理後の再発防止は、継手更新や配管経路の簡略化が効果的
これらの知見は、単に一現場での成功例にとどまらず、再現性の高い手順として整理可能です。
特に、異常音や水跡が出ない場合でも“データの突き合わせ”を軸にすれば、的確な特定が可能であることを実証しました。
🟩 第8章|再発防止を見据えた施工設計と仕上げ
修理後の安定稼働を維持するには、「止めて終わり」ではなく、構造的な再発リスクをどこまで排除できるかが重要です。今回の現場では、配管経路・継手構造・材料選定の三点を見直し、長期的な信頼性を確保する施工設計を行いました。
再発防止の観点から実施した主な対策は以下の通りです。
- 亀裂部を含む配管区間を耐衝撃性HIVP管へ更新し、振動や温度変化に強い構造へ変更
- 不要な分岐バルブや滞留部を撤去し、経路を単純化して圧力損失を抑制
- 接着部の再構成により、気密性・耐圧性・施工後のメンテナンス性を改善
- 配管支持部を補強し、経年変化による揺れ・たわみ・亀裂発生を予防
これらの施工は単なる修理ではなく、「次の十年を見据えた設備改修」という位置づけです。地中配管であっても構造を整えれば、環境変化に強く、点検のしやすい給水ラインを維持できます。結果として、今後のトラブル発生リスクを最小限に抑え、安定した水圧と静音性を両立しました。
🟩 第9章|まとめ・さいごに
今回の事例は、音も水跡も出ない“見えない漏水”を、トレーサーガスと音聴調査の併用で特定・修理した実例です。
一見すると異常がなくても、水道料金の増加やメーターの動きといった「わずかなサイン」を見逃さないことが、被害拡大を防ぐ第一歩になります。
本事例から得られるポイントを整理します。
- 微量な漏水でも、検針やメーターの動きに注意すれば早期発見が可能
- 音聴単独で反応がない場合は、トレーサーガスによる非破壊調査が有効
- 修理時には、再発防止を見据えた構造・材質・接合部の見直しが重要
- 漏水放置は、料金増加だけでなく地盤沈下や建物劣化の原因になる
これらの対策を講じることで、見えない漏水も「短時間・非破壊・的確」に特定でき、家計・設備の両面から安心を維持できます。
当社では、酒々井町を中心に印旛地域(佐倉市・成田市・富里市・八街市・四街道市・印西市・栄町)および周辺地域(千葉市若葉区・芝山町・山武市など)で漏水調査・修理を実施しています。音が出ない、地面が濡れないなどの“無症状型漏水”でも、経験豊富な調査員が現地状況に応じた最適な手法を選定し、確実な止水まで一貫対応いたします。
「原因が分からない水道料金の増加」「検針員からの指摘」「夜間のポンプ稼働異常」など、思い当たる症状があれば早めの点検をご検討ください。小さな異変のうちに行動することが、最も少ない費用で確実に解決する近道です。
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