
分解から試運転までの全工程を写真付きで解説|イワヤポンプ・JPS-4051F-50|施工事例編
はじめに
深井戸用ジェットポンプは「まだ動いている」うちから内部で確実に劣化が進みます。突然の断水を避けるために、定期的な点検や計画整備(オーバーホール)が重要です。
本施工事例では、イワヤ(岩谷電機製作所)JPS-4051F-50 を緊急時の代替機としてストックする目的でオーバーホールした一連の工程と、劣化の実態・再発防止策までを、施工写真の流れに沿って専門業者目線で詳しく解説します。
🟩 ① 基本情報と診断
本章は、現場概要・対象機種の仕様・入庫時の状態を要点でまとめ、以降の工程解説と診断の根拠となる前提情報を示します。
🟦 1. 現場・機種情報
🔷 1-1. 現場プロフィール
- 整備場所:自社倉庫内で引き上げ機を整備
- 本機の位置づけ:緊急時のストック機
- 目的:緊急時の代替機として使用するため
🔷 1-2. 機種仕様
- メーカー/型式:イワヤポンプ(岩谷電機製作所)/JPS-4051F-50
- 種類:深井戸用ジェットポンプ(JP型)
- 電源/出力:単相100V/400W
- 推奨水位:10〜15m(最大約20m以内を目安)
🔷 1-3. 使用履歴と初期状態
- 使用年数:およそ12年
- 外観:目立つ漏水なし・台座等に錆の進行を確認
- 動作:簡易運転は可。電装部の経年劣化、回転体(羽根車・ベアリング)に疲労蓄積の兆候
🟦 2. 事前診断(初期症状と想定リスク)
入庫時点の点検で把握した初期症状と、それに基づく想定リスクを以下に示します。
これらを前提に、整備の優先度と試運転時の評価項目を設定しました。
🔷 2-1. 主な診断ポイント
- 電装部:圧力スイッチ/パワーリレー接点の炭化・摩耗、端子の腐食有無
- 回転体:ベアリングの摩耗音、羽根車外装内面の錆付着、回転抵抗
- 圧力タンク:ガス圧低下/ダイアフラム劣化の兆候
- 絶縁抵抗・電流値:短時間運転での過電流・温度上昇の有無
🔷 2-2. 想定される“連鎖劣化”
圧力タンク劣化 → 起動停止の過多 → 圧力スイッチ/リレーの接点焼損 → 基板過熱 → モーター過負荷
という故障連鎖を想定。今回の整備では予防保全を最優先に据えます。
🟩 ② 作業工程
分解から試運転までの手順を時系列に記載し、各工程の目的と確認ポイントを要約します。
🟦 1. 作業フロー(全体像)
🔷 1-1. 分解〜試運転の工程構成
- 分解(モーター部・通水路の取り外し/電装部の分解)
- 清掃(内部スケール・錆・埃の除去)
- 部品交換(消耗品:パッキン・ボルト、必要に応じ電装)
- 再組立(締付トルク管理/通電系統の確認)
- 防錆(台座・鉄部の再塗装)
- 潤滑(ベアリング等のグリスアップ)
- 試運転(吐水量・圧力・起動/停止・異音・漏水の総合チェック)
※本機はストック運用前提のため、**「いま壊れていなくても将来トラブルの芽になり得る箇所」**を優先整備。
🟦 2. 作業写真でみる工程解説(キャプション付き)
作業時に撮影した写真の順に沿って、各工程の実施内容と確認ポイントを簡潔に記載します。
🔷 2-1. 作業開始:構成部品の取り外し

↑作業開始前

↑台座から取り外したモーター部
作業内容
台座からモーター部/通水路を取り外し、内部点検ができる状態へ。配線・端子はマーキングして復元性を担保。硬化したパッキン、焼け跡のある接点をこの段階で一次ふるい。
🔷 2-2. 台座の防錆処理

↑台座表面の塗装後

↑台座裏面の塗装後
作業内容
①台座を清水で洗浄 → ②ケレンで錆を除去し素地を調整 → ③脱脂後、防錆スプレーで塗装の順で施工(写真は表面と裏面)。屋外保管や湿潤環境で腐食が進むため、ストック品でも防錆は必須です。
🔷 2-3. 組み立て作業の様子

↑組み立て作業後
作業内容
モーター部・通水路を洗浄後に再組付。電装部の消耗・腐食ボルトは新品へ、パッキン類は全交換。締付トルクとガスケット面の密着を管理して水密性を確保。
🔷 2-4. 試運転の準備

↑揚水試験準備後
作業内容
ポンプ本体・揚水管・吐出管・水槽をセット。水槽に清水を張り、呼び水を実施。電源遮断状態で漏水チェックを先に済ませます。
🔷 2-5. 試運転中の様子

↑揚水試験中
作業内容
水槽循環で吐水量・圧力・清流状態を確認。起動/停止の閾値と頻度、異音の有無、各継手の漏れを重点チェック。絶縁抵抗・電流値の簡易計測で電気系の健全性を確認。
🔷 2-6. ジェット部・吐出確認

↑揚水試験中
作業内容
ジェット部/吐出管からの勢い・脈動の有無を目視確認。脈動が大きい場合は圧力タンク側を疑います。今回はオーバーホールで安定吐水を確認。
🟩 ③ 詳細整備と交換部品
分解後の点検結果にもとづき、再使用可否と再発防止の観点から実施した整備内容および交換部品を、部位別に示します。
🟦 1. 詳細整備(部位別の実施内容)
分解後の点検結果に基づき、部位別に実施した整備内容を報告します。
🔷 1-1. 電装部品(圧力スイッチ/パワーリレー/端子台/制御基板)
● 圧力スイッチ
- 役割:配管圧力に連動してON/OFF。
- 整備:分解清掃・接点のカーボン除去・バネ反力の確認。
- 対策:5〜7年を目安に定期交換推奨。
● パワーリレー
- 役割:スイッチ信号を受けモーターへ電力供給。
- 整備:接点摩耗・溶着の有無確認、必要に応じ交換。
● 端子台・制御基板
- 端子:緩み/腐食の是正。
- 基板:埃・湿気の除去、焼損痕の点検。
- 環境:ポンプ小屋は完全密閉せず通気確保、植栽で虫の侵入を招かない。
- 連鎖注意:圧力タンク劣化→起動過多→接点焼損→基板過熱…の順で壊れます。違和感は早期点検を。
🔷 1-2. 圧力タンク(アキュームレーター)
- 役割:水圧のクッション、起動回数を低減。
- 典型故障:ガス抜け/ダイアフラム破損 → 脈動・チョコ停。
- 整備:外観点検・ガス圧測定/再充填・パッキン交換。
- 交換目安:5〜7年。劣化を放置すると電装 → 基板 → モーターへ波及。
🔷 1-3. 回転体(羽根車/ベアリング/回転軸)
- 羽根車:外装内面の錆付着を除去。鉄分の多い水質や長期未使用で回転抵抗が増し、水が出ない典型症状へ。
- ベアリング:潤滑切れ・摩耗により「キュー音/ガラガラ音」。状態に応じ交換。
- 回転軸:曲がり・摩耗の点検、グリスアップで摩擦低減。
- 音はバロメータ:
初期=停止時の「キュッ」/中期=運転中の「ガラガラ」/末期=モーター回るが汲み上げ不能。
🔷 1-4. 防錆・塗装
研磨 → 脱脂 → 防錆塗装を台座・鉄部へ施工。屋外・湿潤環境での再錆進行を抑制。
🟦 2. 交換・整備した主な項目(サマリ)
実施内容は、交換/整備/調整/保護の四区分に分け、要点のみ掲げます。
- 交換:各種パッキン/腐食ボルト/必要部の端子・小物
- 整備:圧力スイッチ・リレーの分解清掃、端子台清掃、基板クリーニング
- 調整:圧力タンクガス圧、締付トルク、絶縁抵抗・電流値の健全化確認
- 保護:台座の防錆塗装、回転部のグリスアップ
🟩 ④ 試運転と成果
本章では、試運転で確認したチェック項目とその結果を要点で記し、ストック機としての適合可否を示します。
🟦 1. 試運転・最終チェック
🔷 1-1. チェックシート(抜粋)
- 起動圧/停止圧の作動確認(※JPS-4051F-50の参考例:起動0.18MPa/停止0.24MPa)
- 吐水量・水圧の安定、脈動の有無
- 異音(起動/運転/停止)の変化
- 電流値・絶縁抵抗の良否
- 全継手・通水路・軸周りの漏れ確認
🔷 1-2. 結果(抜粋)
- 安定吐水を確認、異音は基準内へ低下
- 起動停止の過多なし、電装の誤作動なし
- ストック機として合格(非常用の即時入替に使用可能)
※ストック前に半年に一度の通電・試運転を推奨。長期未使用は羽根車固着の一因。
🟦 2. 成果(ビフォー/アフター要点)
整備前後の主な改善点を、要点で記します。
- 起動安定化:タンク再調整+電装清掃で小刻み起動が解消
- 静粛性回復:回転体整備とグリスアップで異音を抑制
- 水密性向上:パッキン総替え・腐食ボルト刷新で滲み無し
- 耐候性強化:台座の防錆塗装で保管時の劣化抑制
🟦 3. 予防保全のポイント(実務ノウハウ)
現場での再発防止に向け、交換時期・環境管理・運用習慣の三点から実務上の要点を整理します。
- 圧力タンクは5〜7年目安で交換(劣化は“連鎖”の起点)
- 水漏れ・止水不良を放置しない(蛇口ポタ漏れ、ロータンク不良、敷地内漏水は起動過多の元)
- 通気確保・虫対策(アリ/ナメクジ侵入で電装ショート例多い)
- 長期未使用を避ける(固着防止に定期試運転)
- 水圧の不安定・突然の起動・異音の増大は**“要点検のサイン”**です。
🟩 ⑤ 費用・FAQ
🟦 1. 費用・工期の目安(参考)
- 工期:半日〜1日(状態・部品手配により変動)
- 費用:状態・部品供給状況で大きく変動します(現地診断→御見積)。
※JPS-4051F-50は年式により部品供給状況が異なるため、更新提案を併記する場合があります。
🟦 2. よくある質問(整備・メンテナンスに関するQ&A)
🔹Q. オーバーホールと点検、どう違いますか?
🔹A. それぞれの役割は次のとおりです。
- オーバーホールは、分解清掃・消耗品交換・防錆・再組立・試運転まで踏み込む“総合整備”です。
- 定期点検は、非分解での診断(漏れ/異音/起動頻度/電気測定など)が中心です。
補足説明
当社では家庭用の場合、まずは定期点検と必要箇所の部品交換を基本にし、劣化が進んだ場合は本体交換をご案内します。
🔹 Q. この記事の整備は依頼できますか?
🔹 A. 有料受託はしていません。
本記事は緊急時に備える社内ストック機の整備記録です。
作業過程を写真で可視化し、日ごろのメンテナンスの重要性をお伝えする目的で公開しています。
🔹Q. この記事の主旨は何ですか?
🔹A. 『壊れてからでは遅い』ことを伝えるため、社内で行ったストック機整備のプロセスを写真付きで公開しています。日ごろの点検・予防整備のご参考にしてください。
🔹Q. 音や振動が増えた気がします。様子見で大丈夫ですか?
🔹A. 無理は禁物です。
停止時の「キュッ」→運転中の「ガラガラ」へ進むと、最終的に回っても汲み上がらない状態になることがあります。早めの確認が安心です。
🔹Q. 圧力タンクはどのくらいで交換しますか?
🔹A. 5年毎の交換がひとつの目安です。理想は3年~4年毎の交換です。
補足説明
脈動や小刻み起動が合図です。ガス圧の点検・再充填で回復することもあります。
🔹Q. 圧力タンク(アキュームレーター)で気をつけることは?
🔹A. 『脈動』や『小刻み起動』は要注意です。
ダイアフラム破損やガス抜けが疑われる場合は早期交換が安全です。
補足説明
各水栓やトイレでのポタ漏れ、水道管からの水漏れによっても、井戸ポンプは起動と停止を繰り返します。原因は、井戸ポンプだけとは限りません。
🔹Q. 電装部(圧力スイッチ/リレー/端子台/基板)の予防整備はありますか?
🔹A. 水道管からの水漏れや圧力タンクの劣化→起動過多→接点焼損→基板過熱…という連鎖劣化を断つのがポイントです。
日頃は、接点の焼け・摩耗に繋がる使いに気を付けながら、ポンプ小屋は通気を確保し、虫(アリ/ナメクジ)や砂の侵入対策を取ってください。
🔹Q. 回転部(羽根車/ベアリング)で出やすいサインは?
🔹A. 停止時の「キュッ」→運転中の「ガラガラ」と音が変化し、末期は回っても揚水できない症状に進行します。
使用年数に比例して現れる症状ですので、設置8年を経過したら気にかけてください。
🔹Q. 井戸ポンプを交換に踏み切る判断基準は?
🔹A. 複数の兆候が重なる(脈動+異音+漏れ/電装の誤作動 など)、経年劣化が顕著、**安全リスク(漏電・過熱)**がある場合は交換が合理的です。
ポンプ運転中に「ガラガラ」音がし出したら、動いている間に交換を行ってください。
🔹Q. 点検の頻度目安は?
🔹A. 使用後5年を超えたら年に1回の点検を推奨します。
🔹Q. 日常点検で自分で見ておきたい項目は?(3分チェック)
🔹A. 日頃、下記事項に気を付けてください。
①漏れ(継手・軸周りの滲み)
②音(起動/運転/停止時の変化)
③起動頻度(やたら多い=要注意)
④電源部の発熱・異臭
⑤小屋内の通気/虫の侵入。
※違和感があれば停止・点検を。
🟦 3. よくある質問(漏水調査に関するQ&A)
🔹Q. ポンプが頻繁に動きます。原因はポンプだけですか?
🔹A. いいえ。
ポンプ本体と蛇口・トイレ・配管などの不具合が重なっていることがあります。続く場合は点検と漏水調査の対象です。
🔹Q. 水を使っていないのにポンプが動きます。故障でしょうか?
🔹A. ポンプの不具合と配管側の水漏れの両方が考えられます。
放置せず、点検もしくは漏水調査をご相談ください。
🔹Q. 蛇口のポタポタは、放っておいても大丈夫ですか?
🔹A. 小さな漏れでも通水が続くため、起動回数が増えて機器に負担がかかります。
修理もしくは蛇口の交換をご検討ください。
🔹Q. トイレがたまに流れっぱなしになります。
🔹A. ボールタップやフロート弁の不具合が疑われます。
症状が続くと起動が多発し、ポンプの故障に直結します。修理を行ってください。使用年数が長い場合は、交換もご検討ください。
🔹Q. どんなときに相談すべきですか?
🔹A. 次の症状が一つでもあればご連絡ください。
ポンプが止まらない、起動回数が増えた、蛇口の水が安定しない、音や振動が大きい、屋外の地面が不自然に湿っている。
🔹Q. 漏水調査では何をしますか?
🔹A. まず音聴器で配管の異常を確認し、必要に応じてトレーサーガス調査で範囲を絞ります。
特定後は修理のご提案〜施工まで対応します。
補足
当社は、トレーサーガス調査と路面音聴調査を併用した漏水調査と修理を行っています。漏水に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
🟩 ⑥ まとめ(施工事例の要点)
JPS-4051F-50をストック目的で分解→清掃→交換→再組立→試運転まで実施。
タンク・電装・回転体をバランスよく整備し、起動安定・静粛性・水密性を回復。
予防保全の最重要ポイントは、
- 圧力タンクの適正交換
- 水漏れ・止水不良の是正(※敷地内漏水含む)
- 通気と虫対策
- 定期試運転
ストック機の常備により、現場故障時の復旧時間を短縮できます。
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