千葉県富里市【故障事例】深井戸ジェットポンプJF-750|川本ポンプの「水が出ない」症状とオーバーホール対応

深井戸ジェットポンプJF-750の故障事例:完全停止に至ったケースとオーバーホール対応


📌 この記事の概要

設置場所|千葉県富里市

機器の状態|ポンプが動かず、水が出ない。

仕様用途| 農業用水(散水)

種類型式| 川本ポンプ・深井戸用ジェットポンプ/JF-750

電源出力| 三相200V/750W



はじめに

富里市の農家から「井戸ポンプが完全に水を汲み上げなくなった」との依頼がありました。

散水シーズン中はだましだまし使えていたものの、実際には症状が段階的に進行していました。

  • 以前より水量が少なく感じる
  • 吐水が一定せず、散水が途切れることがある
  • まれに全く水が出ず、起動スイッチを叩いてごまかしながら使用していた

当初は「水の出が悪い程度」に見えても、農業用のように長時間・高負荷で使い続けることで 内部部品の劣化やセンサー誤作動が重なり、ついには完全停止に至った典型例 といえます。


👉 以前ご紹介した浅井戸ポンプ版JF-750(八街市)は、症状が軽度の段階で整備を行ったため、比較的早期に性能を回復できました。

一方、今回の深井戸版(富里市)は「症状を我慢して使い続けた結果、完全停止に至った」という違いがあります。


つまり、浅井戸版は“初期対応で回復したケース”、深井戸版は“放置により最終停止に至ったケース” として対比でき、症状が進行するとどのような結果になるかを示す貴重な事例となりました。

このような経緯から、既設ポンプを取り外し、自社倉庫にて分解整備(オーバーホール)を実施しました。


もくじ

はじめに(依頼の経緯)

  1. ポンプの情報
  2. 故障の症状
  3. 作業の流れ
  4. 不具合の原因と点検結果
  5. まとめ
  6. さいごに



🟩 1.今回オーバーホールした井戸ポンプの情報

今回整備したのは、川本ポンプ(川本製作所)の JF-750(三相200V・750W/インバーター式) です。

この機種は浅井戸・深井戸どちらにも対応できる兼用型で、アタッチメントを切り替えることで用途に応じた運転が可能です。


今回は 深井戸用ジェットポンプのアタッチメント を装着し(画像右側)、農地散水用として使用されていましたが、比較的浅い使用年数で不具合が発生しました。



◼️井戸ポンプの主な仕様

家庭用の単相100V・600Wクラスに比べ、業務用である三相200V・750WのJF-750は、大量散水や複数口での同時使用にも耐えられる性能を備えています。

今回は 深井戸用ジェットポンプのアタッチメントを装着して運用していました。浅井戸用にも切替可能な兼用型ですが、用途や水位条件によって性能は大きく変わります。


おもな仕様

  • メーカー:川本ポンプ(川本製作所)
  • シリーズ名:カワエースシリーズ JF形(浅深兼用)
  • 型式:JF-750
  • 出力:750W
  • 動力電源:三相200V
  • 方式:インバーター式


◼️ インバーター式ポンプの特徴(補足)

JF-750はインバーター制御を採用しており、モーターの回転数を使用水量に応じて自動調整する仕組みになっています。


▪️ 自動制御による効率運転

蛇口の開閉や使用水量に応じて、モーター回転数を自動的に調整します。必要な分だけ稼働するため、無駄な電力を消費しません。


▪️ 省エネ効果

常に全力運転をする一定回転式ポンプに比べ、電気代を抑えることができます。特に散水や多用途で水量が変動する現場では効果が大きくなります。


▪️ モーター寿命の延長

回転数を状況に応じて制御するため、モーターへの負荷が軽減され、結果的に部品の摩耗や劣化を抑制できます。


▪️ 安定した吐水圧

使用量が変動しても水圧が一定に保たれるため、散水作業や複数蛇口での利用において使い勝手が向上します。


◼️ まとめ

従来型ポンプに比べて初期コストはやや高くなりますが、ランニングコスト削減や寿命延長を考えると、長期的には経済的で信頼性の高い方式といえます。



🟩 2.故障の症状

顧客からの申告および点検時の確認で、以下の不具合が確認されました。


▪️水量が以前に比べて少なく感じる

同じ散水作業でも吐出量が明らかに減り、散水範囲が狭くなりました。複数の散水口を同時に開くと水圧が大きく低下しました。


▪️使用水量が増えるとモーター回転数は上がるが、吐水量が持続しない

インバーター制御によって回転数は上昇するものの、水量が安定せず途中で圧力が抜ける挙動が見られました。センサーの不良が疑われる状態です。


▪️運転中にモーターが瞬間的に停止し、再び起動する現象がある

散水中にポンプが断続的にON/OFFを繰り返し、そのたびに水が途切れてしまい、作業効率に大きな支障が出ていました。


この現象は、ファインセンサーの接点が水垢により不安定となり、瞬間的にON/OFFを切り替えてしまう「チャタリング」による影響が考えられます。さらに、圧力タンク(アキュームレーター)のゴム膜劣化により圧力吸収ができず、制御が周期的に揺れる「ハンチング」も併発していた可能性があります。


👉 つまり、チャタリング(瞬間的な細かいON/OFF)とハンチング(周期的な揺れ)の両方が重なり、ポンプの制御が不安定になっていた といえます。


👉 まとめ

これらの不具合は一見すると「小さな異常」に見えますが、農地散水では水量不足や断水がそのまま作物の生育不良に直結します。表面的な清掃や一時的な修理では根本解決にならないため、原因を徹底的に追究し、オーバーホールによる分解整備が不可欠と判断しました。



🟩 3.作業の流れ

オーバーホール作業は大きく分けて以下の5つの手順で進めました。

  1. 取り外し工程
  2. 清掃・整備
  3. 主要部品の点検(制御基板、ファインセンサー、その他)
  4. 組立と電気的な確認
  5. 試運転


1.取り外し工程

まずは電源を遮断し、安全を確保したうえで、台座からモーター部・制御基板を取り外します。さらに電気部品、冷却ファンカバー、アキュームレーター(圧力タンク)、各種コネクターや配線を順番に分解。

部品ごとにラベルを付けて整理し、再組立時に誤差が出ないよう慎重に取り扱います。



2.清掃・整備工程

取り外した部品は、水洗いやエアブローを使ってホコリ・砂埃・水垢を除去します。電装部品は湿気を避けながらブラシ清掃を行い、金属部品には防錆剤を塗布。摩耗や劣化の進んでいるパッキン類はすべて新品に交換し、水密性・気密性を回復させました。

また、回転軸や摺動部にはグリスアップを行い、摩擦抵抗を減らすことでモーターの負担を軽減しています。


3.主要部品の点検

▪️ファインセンサー

ポンプのON/OFFを制御する要の部品です。分解清掃と錆除去を行いましたが、動作が不安定であったため新品へ交換しました。


▪️制御基板(インバーター式)

基板表面に堆積したホコリを除去し、各コネクターを取り外して接点を清掃。

焼き付き痕やショートの兆候がないかを確認し、再利用可能な状態に整備しました。


▪️その他部品

ボルト・ナットなどの金属部品のうち腐食や固着が見られるものは交換。電線端子も締め直しを行い、導通不良を防止しました。



4.組立と電気的な確認

すべての部品を元通りに組み付け、接続部の位置やトルクを確認。組立後には必ず 絶縁抵抗測定 を行い、漏電や短絡の危険がないかをチェックしました。

問題がないため、試運転へ移行します。



↑試運転前

ポンプ内部と管内の過大圧力防止のために、深井戸用アタッチメントを浅井戸用に切り替える。



↑試運転中

水槽に貯めた水をポンプで吸い上げ、吐き出すことから、ポンプの状態を確認します。



5.試運転|動作状況の確認と安全配慮

最終工程では、現地井戸ではなく、自社倉庫にて循環水槽を利用した試験を実施。

問題がなければオーバーホールは完了です。

  • 水を吸い上げて水槽に戻す動作を繰り返し、残留汚れを除
  • モーター音や吐水圧を確認
  • 起動・停止が正常かを確認
  • 接続部からの水漏れがないかを点検


◾ 試運転の結果

結果として、モーター音や吐水の状態、起動停止の挙動ともに異常はなく、問題なく使用できることを確認しました。


◾ 安全配慮

安全のため、試運転は 深井戸アタッチメントを外し、浅井戸用アタッチメントに切り替えて実施 しました。

750Wの深井戸仕様で水槽試験を行うと管内圧力が過剰になり、破損や漏水のリスクがあるためです。



🟩 4.故障原因と整備のポイント

◼️圧力タンク(アキュームレーター)の劣化

内部のゴム膜が経年劣化により亀裂・破損を起こし、圧力を正常に吸収できなくなっていました。これにより、ポンプのON/OFFを制御するファインセンサーが誤作動し、モーターが瞬間的に起動と停止を繰り返す状態となっていました。結果として吐水量が安定せず、「水が出ない」と感じられる原因になっていました。


◼️ファインセンサーの不良

井戸水の水質による影響で、接点部や内部基板に水垢が大量に付着し、動作不良を起こしていました。停止信号が正常に送られないため、モーターが動き続けて熱を持ち、焼き付き故障につながるリスクが高い状態でした。今回は分解清掃を実施しましたが、基板内部に焼き付き痕が見られたため新品交換を行いました。


◼️モーター冷却不良と周囲環境

モーター冷却ファンのカバーにある通気口が砂や埃で塞がれており、回転軸やプロペラ部にも異物が付着していました。その結果、冷却効率が低下し、モーターがスムーズに回転できない状況になっていました。


さらに、制御基板表面には虫の糞と思われる黒い堆積物が見られ、内部には虫の抜け殻やクモの巣も確認されました。もし電気端子やコネクター部にまで入り込んでいたら、ショートや誤作動に直結する危険な状態でした。


◼️ 整備で実施した内容

  • ファインセンサー:分解清掃を実施後、不具合が長期化していたため新品交換
  • 圧力タンク(アキュームレーター):ゴム膜の劣化が確認されたため新品交換
  • モーター部:通気口や回転軸を水洗い清掃し、冷却性能を回復
  • 制御基板:接点部の清掃と絶縁抵抗測定を実施し、適正値を確認
  • ポンプ本体(吸込口・圧送口・吐出口)

深井戸用ジェットポンプのフランジ形アタッチメントと呼び水栓を取り外し、各口から水を流し込んで水洗い洗浄を行い、内部に付着した水垢を徹底除去。

羽根車周囲を常に満水状態に保ち、安定した揚水性能を確保しました。

  • その他:腐食ボルトや劣化したフランジパッキン類を交換


◼️ 設置環境の注意点|虫や砂埃による故障リスク

今回の点検を通じて、ポンプ本体の設置環境がいかに重要かが改めて分かりました。

  • 基板表面に虫の糞が堆積
  • 内部に抜け殻やクモの巣が散乱
  • 通気口に砂や埃が付着し、冷却効率が低下

これらはすべて、設置環境によって引き起こされるトラブルです。


井戸ポンプを長持ちさせるためには、以下の対策が有効です。

  • 井戸周囲に 樹木や草花を植えない(虫が集まりやすくなる)
  • 畑や砂地の近くでは 簡易な小屋を設け、砂埃や虫の侵入を防ぐ
  • 小屋には 通気口を設け、風通しを確保する

こうした環境整備を行うことで、電装部品や基板の寿命を大きく延ばすことができます。



🟩 5.まとめ|深井戸ジェットポンプJF-750の不具合とオーバーホールの意義

今回の事例では、農地散水に使われていた 川本ポンプJF-750(深井戸ジェットポンプ) において、

  • 水量の低下
  • モーターの瞬間停止と再起動
  • 吐水圧の不安定化

といった不具合が確認されました。


点検の結果、ファインセンサーの動作不良、圧力タンク(アキュームレーター)の劣化、モーター冷却部や制御基板の汚れ が重なっていたことが判明。

そこで、部品の分解清掃・交換・防錆処理・電気系統の測定を実施し、最終的に試運転で正常動作を確認しました。


👉 このように、不具合は「単一原因」ではなく 部品劣化 × 設置環境 × メンテ不足 が複合的に作用して発生します。オーバーホールによって、再び安定した揚水性能を取り戻すことができました。


さらに今回の事例は、業務用(農業用)のハードな使用環境によって早期に不具合が顕在化したケースですが、家庭用井戸ポンプでも年数を重ねれば同様の症状が発生し得る ことを示しています。

違いは使用の負荷と頻度だけであり、根本的なメカニズムは共通です。


👉 定期的な点検や清掃、異音や水量低下といった小さな兆候への早期対応 こそが、井戸ポンプを長く安心して使い続けるための最善策です。



🟩 6.さいごに|不具合を放置せず、早めの点検を

井戸ポンプは、生活用水・農業用水・業務用散水 など、暮らしや仕事を支える重要な設備です。

しかし、今回の事例のように 小さな不具合を放置すると「水が出ない」「散水できない」といった深刻な停止トラブルへ直結 してしまいます。

  • 水量が少なくなった
  • 水の出方が一定でない
  • 運転が断続的になる
  • 異音や振動が増えた

こうした兆候は、部品劣化や環境要因による故障のサインです。

「そのうち直るだろう」と見過ごすのではなく、点検や整備を早めに実施することが最終的なコスト削減につながります。


今回のオーバーホールでは、部品の清掃や交換を通じて不具合を解消し、再び安定した揚水性能を取り戻しました。

この事例が、井戸ポンプを安全に長く使い続けるための “早期発見・早期対応の大切さ” を知っていただくきっかけになれば幸いです。



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