千葉県多古町|トレーサーガスと音聴調査で特定した無音漏水|コンクリート製流し台下の井戸配管を修理
🟩 千葉県多古町|漏水調査事例【井戸水】【砂質地盤】
千葉県多古町の戸建住宅で、砂質地盤に埋設された井戸配管からの微細漏水を特定した施工事例です。
千葉県多古町の非分譲地に建つ戸建住宅(母屋+倉庫併設)で、外流し台下の配管から発生した微細漏水を特定した施工事例です。
造り付けのコンクリート構造下で音も濡れ跡も現れない難条件の中、トレーサーガスと音聴調査を併用し、わずかな圧力変化から異常を絞り込みました。
さらに倉庫側の水栓引込管では「ガスは漏れるが水は漏れない」非排出型圧損も確認され、二重の異常を一連で把握し、原因を解明しました。
🟧 要 点
◾調査手法:トレーサーガス+音聴調査によるハイブリッド特定。
◾発見内容:コンクリート下の外流し台・倉庫側で微細漏水を確認。
◾漏水の数:2箇所。
◾期間:2.5日(初動0.5日/本調査・修理2日)。
◾環境:砂質地盤+厚10cmコンクリートで反応が弱い。
◾難易度:特高(音・ガス反応ともに極めて微弱な環境)。
🟧 調査の手法と手順
◾ 水素系トレーサーガス法を主体に、音聴調査・圧力挙動観測を併用。
◾ 圧力計降下を確認後、加圧0.18→0.23MPaに調整し、外流し台下と倉庫横で濃度上昇を検知。掘削でエルボ部ピンホールを確認。
◾ 修理後、再注入で再検知なし。圧力安定とポンプ動作を確認し完了。
🟦 基本情報
◾ 千葉県多古町|非分譲地|2階戸建(母屋+倉庫併設)|井戸水
◾ 漏水量:1分間あたり200mL未満(微細漏水・地表反応なし)
◾ 漏水数:2箇所
◾ 漏水箇所:外流し台下のVP管エルボ部/倉庫横の水栓柱引込管エルボ部
◾ 調査日数:本調査+修理 1日
🟦 現場状況
◾ 敷地:宅地+家庭菜園(約250坪)/非分譲地で建物間隔が広い
◾ 配管:母屋と倉庫を地中で連結。増設履歴あり・埋設深さ約40cm
◾ 地盤:砂質で透水性が高い
◾ 路面:コンクリートと玉砂利敷きのため、濡れ跡や音反応が出にくい
🟦 家屋と設備状況
◾ 家屋構造
▪️ 木造2階建て(母屋+倉庫併設)
▪️ 築36年
◾ 設備構成
▪️ 浴室(ユニットバス)or浴室(在来)
▪️ トイレ×2、洗面台×2
▪️ 台所・洗濯機水栓
▪️ ガス給湯器 or エコキュート
▪️ 外水栓柱×3・散水栓×2
◾ 給水設備
▪️ 深井戸用水中ポンプ:テラル 25TWS-5.6-11
▪️ 三相200V/出力600W/使用18年
🟦 構 成
◾第1章|ご依頼の背景と現場概要
◾第2章|点検と調査の進展
◾第3章|トレーサーガス調査と音聴結果
◾第4章|修理工事と圧力安定化
◾第5章|調査考察と再発防止
◾第6章|まとめとお客様コメント
🟩 第1章|調査の概要と目的
千葉県多古町において、井戸ポンプの断続作動をきっかけに実施した漏水調査の事例です。
母屋の横に倉庫を備えた一般住宅で、広い敷地内には散水や洗浄用の外水栓が複数設けられていました。そのうち、造り付けコンクリート製の外流し台まわりで、水の使用がない状態にもかかわらずポンプが動くという症状が見られ、調査のご依頼をいただきました。
🟦 現場環境と設備条件
流し台の下部および側面は厚さ10cm以上のコンクリートで打設されており、内部の水分や音が地表へ伝わりにくい構造でした。
また、敷地全体が砂質地盤で透水性が高く、漏水が起きても地表に滲み出にくい環境です。
▪️地盤条件:砂質地盤(透水性が高く乾燥維持しやすい)
▪️構造条件:流し台下が厚打ちコンクリート構造(閉鎖空間)
▪️配管種別:VP管(経年硬化あり)
▪️給水源:深井戸ポンプ(使用年数18年超・圧力タンク併設)
これらの条件が重なり、音や濡れなどの外的兆候が一切現れない“無音漏水”環境が形成されていました。
🟦 圧力挙動の確認と初動判断
井戸ポンプの通水後、圧力上昇は正常でしたが、停止直後に**圧力計の針がわずかに戻る「微戻り」**が見られました。この現象は、圧力タンク内部の空気層が変化している際に現れるもので、次のような要因が考えられます。
▪️ゴム膜の硬化や伸縮不良による吸収性能の低下
▪️継手またはネジ部からの微細な漏れ
▪️タンク内空気層の減少や混入による圧縮変化
施主様からは「最近ポンプの作動回数が増え、電気代も上がっている」とのご相談を受け、外部漏れまたは圧力タンク不良のいずれかが関係していると判断しました。
🟦 調査方針と実施手順
図面が残っていなかったため、施主様へのヒアリングで増設履歴を確認し、母屋から倉庫・外流し台へと続く経路を再構成しました。
非破壊で確認できる範囲を広げるため、次の3段階で調査を実施しました。
1️⃣ 圧力観測:停止後の圧降下率を1時間観測(非排出型の緩やかな降下)
2️⃣ トレーサーガス調査:水素系ガスを段階加圧(0.25→0.30→0.35MPa)
3️⃣ 音聴調査:ガス反応が弱かった箇所を重点的に再測定
午前中のガス注入では濃度変化がほとんど見られず、造り付け構造によりガスの透過経路が遮断されていると判断。午後からは路面音聴に切り替え、地中音の検知を試みました。
🟦 漏水箇所の特定と確認結果
路面マイクでは、流し台前面でかすかな「シュー」という連続音を検出。位置特定のため、側面と背面に穿孔を行い、音聴棒で再測定を実施しました。
その結果、側面の穿孔点で最も明瞭な漏水音を確認。
該当箇所のコンクリートを切断し、配管を露出したところ、VP管エルボ継手部に線状の亀裂を確認し、原因箇所が確定しました。
修理はHIVP管とHI継手を用いて実施し、再通水後に圧力計の安定とポンプ作動の正常化を確認しました。
🟦 章末まとめ
本件は、造り付け構造による閉鎖空間下で進行した**“無音漏水”を音聴調査で特定**した事例です。
また、修理後の圧力検査で「圧は下がるが水は漏れない」挙動を観測し、非排出型圧損の現象も同時に確認できました。
構造・地盤・機器の三要素が絡む複合要因の中で、段階的に非破壊調査を組み合わせた結果、最小限の破壊で確実な特定と修理に至ることができました。
🔸当社では、多古町をはじめ印旛地域全域で、井戸ポンプや屋外水栓まわりの漏水調査・修理に対応しております。
🟩 第2章|初動調査と経路仮定――圧力挙動から導く複合要因の推定
井戸ポンプの断続作動を確認した時点で、外部漏れと内部気密の両面を想定した初動調査を開始しました。地表に濡れ跡や水音がないため、目視では判断できず、圧力計の動きと管内挙動を中心に原因を探る方針としました。
結果として、微細な圧力低下・構造的な遮音・砂質地盤の吸収という三つの要因が重なっていることが分かりました。
🟦 圧力計の“微戻り”から見えた内部挙動
ポンプ停止後、圧力計の針は一度わずかに戻る動きを示し、その後は緩やかに下降して安定しました。
この挙動は、圧力タンク内の空気層が圧縮・膨張を繰り返すときに見られる典型的なパターンで、外部漏れと内部気密低下の両方が関与している可能性を示していました。
施主様からは「最近ポンプの動作音が増えた」「夜間でも自動的に動いている」とのご相談があ長期間にわたって少量の漏れが継続していたと考えられます。
こうした症状は、
▪️圧力タンク内部の空気層減少
▪️ゴム膜の伸縮不良による吸収遅れ
▪️継手部のわずかな気密抜け
が複合して生じることがあります。
この段階では、漏水か内部圧損かを切り分ける必要があると判断しました。
🟦 経路の再構成と調査手順の整理
建築当初から増設が繰り返されていたため、配管図面は残っていませんでした。
そのため、施主様へのヒアリングをもとに、母屋から倉庫・外流し台へ伸びる配管経路を再構成しました。
▪️母屋→倉庫→屋外流し台の順に直列配管
▪️倉庫裏の流し台下は厚さ10cm以上のコンクリートで覆われている
▪️地盤は砂質で透水性が高く、音の伝達が弱い
この情報から、地表反応の乏しい閉鎖環境下の漏水が疑われました。
調査手順は次の3段階で設定しました。
1️⃣ 圧力挙動観測:停止後の降下率を1時間観測(約0.05MPa低下)
2️⃣ トレーサーガス調査:水素系ガスを段階加圧で注入(0.25→0.30→0.35MPa)
3️⃣ 音聴調査:ガス反応の弱い箇所を重点的に測定
圧力降下率が一定で、水漏れ反応が見られない場合には、**非排出型圧損(圧力だけが抜ける現象)**の可能性も考慮するよう方針を定めました。
🟦 造り付け構造と砂質地盤がもたらす検知の限界
午前中に実施したトレーサーガス注入では、コンクリート層の厚さと地盤特性の影響により、ガス濃度の上昇はごくわずかで、明確な反応点を得るには至りませんでした。
原因として、以下の2点が特に大きく関与していました。
▪️コンクリート厚が10cmを超え、ガスの透過経路が遮断されている
▪️砂質地盤が乾燥状態を保ち、漏出したガスや水がすぐに拡散・消失する
これにより、地表面での反応検知は困難と判断。午後からは、より直接的な音聴法へ移行し、穿孔点を設けて地中音を拾う調査へ切り替えました。
🟦 音聴調査による位置特定への移行
路面マイクでの一次測定では、外流し台の前面でごく微弱な高音域ノイズを確認。そこで、側面・背面の3点に穿孔を行い、音聴棒を差し込んで再測定しました。
結果、側面の穿孔点で**最も明確な「シュー音」**を検出。ここを中心にコンクリートを切断し、配管を露出させる方針としました。この判断が、破壊範囲を最小限にとどめ、後の修理工程にも大きく寄与しました。
🟦 章末まとめ
第2章では、圧力挙動・構造条件・地盤特性の3要素を整理し、トレーサーガスから音聴法へと段階的に切り替える判断に至った経緯を示しました。
砂質地盤と厚打ちコンクリートが重なる環境では、ガス反応が得られないことも多く、“聞く”“見る”“測る”を組み合わせた多角的調査が不可欠です。
本調査でも、圧力計のわずかな動きが最初の手がかりとなり、その観察結果が確実な特定への導きとなりました。
🟩 第3章|トレーサーガス調査と結果――コンクリート構造下の微細漏水を非破壊で特定
前章で得られた圧力挙動の分析をもとに、非破壊での特定調査を開始しました。
今回は「外流し台下の漏水」と「倉庫側の圧力抜け」の二つの異常が並行して起きており、それぞれの挙動を切り分けながら原因を探る複合的なアプローチが必要でした。
🟦 段階加圧によるガス注入と反応の確認
最初に、水素系トレーサーガスを用いて配管内部に段階的な加圧注入を実施しました。
圧力は0.25MPaから開始し、0.05MPaずつ上げながら保持時間を30分ずつ設定。各段階で検知器による濃度測定を行いましたが、造り付け流し台のコンクリートが厚く、ガスの透過経路が遮断されていたため、地表での明確な反応は得られませんでした。
しかし、注入圧を0.35MPaまで引き上げた際、流し台前面部でわずかな濃度上昇を検知。
他の箇所と比較して数値が微かに上回ったことから、この領域に異常が潜んでいる可能性が高いと判断しました。
🟦 音聴法への切替と穿孔調査の実施
トレーサーガス反応が弱かったため、音聴法へ移行しました。
路面マイクで地表を広範囲に確認したところ、流し台前面付近でごく小さな「シュー音」を検音。ただし音量は極めて低く、周囲のコンクリート層に吸収されており、このままでは位置の確定が難しい状況でした。
そこで、流し台の側面と背面に計3か所の穿孔を行い、音聴棒を挿入して再測定しました。結果、側面中央の穿孔点で最も明確な高音域ノイズを確認。この時点で「流し台下部に埋設された配管に微細な漏れがある」と判断し、穿孔位置を中心にコンクリートを切断して掘削を開始しました。
🟦 漏水箇所の特定と損傷状態
掘削深度約40cmの位置でVP管が露出。
そのエルボ継手部に沿って線状の亀裂が走っており、そこから微量の水が滲み出していました。漏水量は1分あたり200mL未満と推定され、砂質地盤のため地表へ滲出せず、見た目にも変化がない“無音型漏水”の典型例でした。
周囲の砂層は乾燥状態を保っており、水が地中で吸収・拡散していたことが確認されました。このため、地表では濡れも音も発生せず、ポンプ動作のみが唯一の異常兆候でした。
🟦 倉庫側での「水は漏れないのに圧が抜ける」現象
外流し台の修理完了後、圧力計を再設置して再測定を行ったところ、管内圧力が一定速度で低下する現象が続いていました。再調査の結果、倉庫側の水栓柱引込管エルボ部でトレーサーガス反応を検知。
しかし、水の滲出は確認できず、ガスのみが微量に抜ける状態でした。この現象は、井戸ポンプ設備で特有に発生する非排出型圧損であり、継手ネジ部やシール面の微細隙間から圧力だけが抜けるケースに該当します。
井戸設備の場合、管内の空気層が圧縮・膨張を繰り返すため、外部へ水が漏れなくても圧力計の針がわずかに下がることがあります。このため、漏水ではなく「気密の緩み」として判断し、再締結で収束を確認しました。
🟦 修理と復旧の概要
外流し台下の配管は、VP管から耐衝撃性のあるHIVP管へ更新。
継手にはHI規格のエルボを採用し、シール剤を高耐圧型に変更して再接続しました。
復旧方法は、コンクリート再打設ではなく発生土埋戻し+玉砂利仕上げとし、今後の再掘削・点検を容易にしました。また、老朽化したコンクリートブロック製の造り付け流し台は撤去し、施主様の希望により、外水栓柱と新型流し台の組み合わせへと更新しました。
これにより、コンクリート復旧費用を抑えつつ、構造的にも再発防止・保守性向上を両立する形で完了しました。
🟦 章末まとめ
本章では、厚コンクリート構造下でのトレーサーガス反応の限界と音聴法の有効性を示しました。造り付け構造のような閉鎖空間では、ガス抜けがなくても音圧によって特定できることがあり、ガスと音の双方を組み合わせることで精度を高めることが可能です。
また、倉庫側では「水は漏れないが圧だけ抜ける」という井戸設備特有の非排出型圧損も併発しており、この二重異常を同時に把握・整理できたことが、本調査の大きな成果でした。
🟩 第4章|修理内容と圧力計の挙動――配管更新と保守性向上の実務
前章で特定した外流し台下の漏水は、VP管エルボ継手部の線状亀裂によって発生していました。修理では配管更新と構造改善を同時に行い、併せて倉庫側で確認された「非排出型圧損」の再検査も実施しました。
🟦 修理方針と施工工程
造り付け流し台はコンクリートブロックを積み上げて成形された構造で、配管がモルタル内部に完全に固定されていました。漏水箇所を修理するには、側面および背面の一部を破壊し、内部の配管を露出させる必要がありました。
作業では、破壊範囲を必要最小限に抑えるため、切断線を複数設定し、振動が継手部へ伝わらないように段階的に撤去。
露出した配管の硬化や日射劣化を確認し、破損部を撤去してHIVP管+HI継手で再構築しました。
継手ねじ込み時には、ねじ山全周に高耐圧シール剤を充填し、均一な締め込みトルクで接続。その後の耐圧試験で0.35MPa保持を15分間継続し、気密に問題がないことを確認しました。
🟦 復旧構造と保守性の確保
今回の復旧では、将来的な漏水再発や修理時の再掘削を考慮し、コンクリート再打設を行わず発生土埋戻し+玉砂利仕上げを採用しました。
これにより、点検時には表層の玉砂利を除けるだけで再調査が可能となり、構造全体の保守性が大幅に向上しています。
また、老朽化していたコンクリートブロック製の流し台は、現状復旧を行わず、現在主流の外水栓柱+樹脂製流し台の構成へ変更。
施主様の判断で合理的な更新が行われ、復旧費はコンクリート処分費のみに抑えられました。
この選択により、従来の「破壊・打設・仕上げ」に比べて約40%の費用削減効果が得られています。
🟦 圧力計の挙動と再検査
修理後、井戸ポンプを再稼働させて圧力計を観察しました。
停止直後の針はわずかに“微戻り”を示しましたが、その後は安定して一定圧を保持。圧降下も見られず、保持時間は基準値内に収まりました。
この微戻り挙動は、圧力タンク内部の空気層とゴム膜の伸縮応答によるものです。ポンプ停止時、水圧が急に下がると空気層が膜を押し返す力として反応し、針がわずかに戻るように動きます。
その後、内部圧力が均衡すると針の動きは止まり、安定状態を保ちます。
今回のように「戻り幅が一定で収束している」場合は、漏水による圧力低下ではなく、正常な弾性応答と判断できます。
倉庫側の配管についても同様に再検査を行い、圧力低下速度の緩和を確認。ネジ部再締結によって気密保持が安定し、非排出型圧損は解消しました。
🟦 深井戸ポンプの動作確認と助言
修理後の通水試験で、深井戸用水中ポンプの動作が一時的に不安定なことを確認。使用年数が18年を超えており、モーター始動時に一時的な電流上昇が見られました。
施主様には、交換推奨年数(15年)を超えていること、また井戸内の吊りロープ硬化による切断リスクを説明しました。ロープが切れるとポンプが井戸内に落下して回収不能となり、最悪の場合は井戸自体が使用不能になります。
自社データでは、15~18年での発生が最も多く、100件中1~2件の割合で確認されています。そのため、12年を超えたら交換検討・15年を上限とするようご案内しています。
🟦 章末まとめ
今回の修理では、配管の止水だけでなく、構造・保守性・井戸設備の健全性を同時に見直しました。
玉砂利仕上げによる再掘削性の確保、外水栓柱への更新によるメンテナンス性向上など、
将来のトラブルを未然に防ぐ実践的な改修事例です。また、圧力タンクの微戻り挙動を正常反応として整理できたことで、非排出型圧損と漏水の境界をより明確に判断できました。
井戸ポンプ設備特有の圧力変化を理解しながら修理を進めることで、確実な止水と長期安定運転を両立しています。
🟩 第5章|調査の考察と再発防止のポイント――砂質地盤と構造条件がもたらす検知限界
今回の漏水は、砂質地盤・厚コンクリート構造・静音環境という複合条件のもとで発生していました。地表には濡れや滲みの痕跡が一切なく、ポンプの作動異常だけが唯一の手掛かりでした。
外観からは正常に見える環境でも、内部では圧力低下や気密の緩みが進行しており、判断を誤ればポンプやスイッチの不具合と混同されるおそれがある案件でした。
🟦 砂質地盤がもたらす吸収と無音化
砂質地盤は透水性が高く、漏れた水が地中で拡散・吸収されやすいため、地表には濡れや水たまりが現れにくい特徴があります。
今回の現場でも、漏水は常に地中で吸収され、表層の乾燥が保たれていたことで“無音漏水”の状態をつくり出していました。
また、乾いた砂は音の伝導を妨げる吸音体として働くため、音聴調査でも反応が減衰し、検知音が極端に弱くなる傾向があります。
このような条件下では、トレーサーガス調査で空気流動を可視化する手法が有効ですが、コンクリート構造が厚く密閉されている場合には、ガスが抜け出す経路が存在しません。
今回のように、反応が微弱な状態であっても「わずかな濃度差を手掛かりに音聴へ切り替える」判断が、特定への近道となりました。
🟦 コンクリート構造がもたらす調査制約
造り付け流し台のように、コンクリートで配管が囲われた構造では、非破壊調査の反応が極端に得にくくなります。
配管とコンクリートの間に空隙がない場合、漏水しても水やガスが表層まで到達せず、内部で拡散してしまうためです。
そのため今回は、穿孔による直接音聴を併用することで特定に至りました。
ただしこの方法は、施工位置の誤差や構造への影響を考慮した上で、慎重に実施する必要があります。
同時に、倉庫側で見られた「水は漏れないが圧だけ抜ける」現象は、井戸ポンプ環境に特有の非排出型圧損に該当します。内部の空気層が圧縮・膨張を繰り返すうちに、わずかなネジ部の隙間から圧力が抜け、針が下がる現象です。
このような事例では、漏水と誤認しないためにも、圧力計の針の動きを時間軸で観察することが重要です。
🟦 再発防止と点検の指針
再発防止の観点から、以下の3点を重視する必要があります。
1️⃣ 再点検が容易な構造へ更新する
造り付け構造を新調する際は、将来の再掘削を考慮し、コンクリートの全面打設を避け、玉砂利や軽仕上げ構造を採用する。
2️⃣ 圧力・電流・動作をセットで観察する
砂質地盤では音や濡れが指標にならないため、ポンプ作動回数、圧力計の保持時間、電流値などを記録して診断精度を上げる。
3️⃣ 井戸ポンプまわりの環境維持
湿気や草木の繁茂は電装部の劣化を早め、誤作動や絶縁不良を誘発するため、周囲の通気を確保し定期清掃を行う。
こうした基本管理を守ることで、見えない箇所での進行トラブルを早期に発見でき、修繕費の抑制にもつながります。
🟦 章末まとめ
本件は、**音も濡れも反応もない「無音型漏水」**の典型でした。トレーサーガスと音聴を段階的に切り替えながら、地中深部の微細漏水を非破壊で特定した点は、実務的にも大きな成果です。
加えて、井戸設備特有の非排出型圧損を同時に観測できたことで、「圧は下がるが水は漏れない」ケースを理論と実測の両面で整理することができました。
現場での判断力が調査の成否を左右する――その一例といえる事例です。
🟩 第6章|日常点検とミキシングバルブ交換の目安――異常兆候を見逃さないために
井戸ポンプ設備やエコキュート併用環境では、外観上の変化が乏しくても、内部ではゆるやかに不具合が進行することがあります。
わずかな動作音や圧力の挙動が、早期発見のきっかけになることも少なくありません。
🟦 井戸ポンプまわりの点検ポイント
井戸ポンプは通常、蛇口を開けたときにのみ作動します。しかし停止中にも数分ごとに「カチッ」という作動音が聞こえる場合、配管や圧力タンクの気密が低下している可能性があります。
この状態を放置すると、ポンプが頻繁に起動と停止を繰り返し、接点の焼き付きやモーターの過熱を招きます。
また、ポンプ周囲に湿気がこもる環境では、端子ボックス内での結露や腐食が進み、電装トラブルの原因となります。
▪️ポンプが自動で断続作動していないか
▪️圧力計の針が停止後に滑らかに下がっていないか
▪️タンク周囲に水滴や湿気がないか
これらの確認を日常的に行うだけでも、異常の早期発見につながります。
🟦 エコキュート・ミキシングバルブの点検目安
井戸水を熱源に利用している場合、鉄分・カルシウム・マンガンといった水質成分が機器内部に沈着しやすく、ミキシングバルブの動作不良を引き起こすことがあります。
▪️出湯温度が安定しない
▪️設定温度よりぬるい湯が出る
▪️湯量が一定せず、途中で水に切り替わる
こうした現象が出た場合、内部のバルブ部品にスケール(水垢)が付着して動作が鈍っている可能性があります。この場合、機器メーカーの分解洗浄または部品交換が必要となります。
井戸水環境でエコキュートを使用しているご家庭では、下記を推奨しています。
▪️2年に一度の定期点検
▪️5〜7年を目安としたバルブ部品交換
ただし使用頻度や水質条件によって前後するため、ポンプや給湯機器の作動音・湯温変化を総合して判断することが重要です。
🟦 再発防止とメンテナンスサイクル
井戸ポンプ設備は、部品単体の経年劣化が全体の不安定動作につながることが多く、計画的な交換サイクルの管理が重要です。
▪️圧力タンク:5〜6年で交換(内部ゴム膜の硬化防止)
▪️圧力スイッチ:8年で交換(接点摩耗・通電不良の予防)
▪️井戸ポンプ本体:15年を目安に交換検討(モーター絶縁低下・吊りロープ硬化)
これらを定期的に実施することで、突発的な断水や電装トラブルの発生を防ぎ、安定した水圧と給湯温度を維持することができます。
また、ポンプ周辺の通気性を確保し、草木や物品を近づけないことも大切です。湿度が高いと、基板や端子の腐食・漏電リスクが高まるため、小さな環境管理が結果的に機器寿命を延ばします。
🟦 章末まとめ
日常点検と定期交換を怠らなければ、井戸ポンプ設備は長期間安定して稼働します。
「音」「圧」「温度」など小さな兆候を見逃さず、異常が出た段階で早めに相談することで、高額な修理や再施工を避けることができます。
井戸ポンプや給湯設備に違和感を覚えた際は、出湯温度や圧力を一次的に確認し、必要に応じてメーカー修理を含めた適切な対応をご案内します。
🟩 第7章|まとめ――複合要因の中で確実に特定した非破壊調査の成果
今回の調査は、「音がしない」「濡れもない」「圧力だけが下がる」という三重の難条件が重なった中で、外流し台下の微細漏水を非破壊で特定した事例です。地表の乾燥状態や砂質地盤による吸水性、厚いコンクリート構造による遮音性が重なり、一般的な音聴調査では発見が困難な環境でした。トレーサーガス法では反応が極めて弱く、濃度上昇が判断の決め手になるほどの差が得られませんでしたが、音聴棒による穿孔調査に切り替えることで、地中深部からのわずかな漏水音を捉え、特定に至りました。複数の非破壊手法を段階的に切り替えながら精度を高め、結果として破壊範囲を最小限に抑えた修理を実現しています。
修理後は、圧力挙動の観察によって倉庫側配管の「非排出型圧損」も確認されました。これは井戸ポンプ設備特有の現象であり、水は漏れず圧力だけが抜ける状態を示すものです。空気層の収縮や継手ネジ部の微小な気密抜けが要因であり、圧力計の針がゆっくり下降し途中で安定するような挙動を示します。こうした現象を正しく理解し、漏水と誤認しないことも、井戸設備の健全運転を維持するうえで欠かせません。
さらに、修理後の構造は点検性を考慮した設計とし、再打設を行わずに玉砂利仕上げで復旧しました。今後同様の異常が発生しても容易に再調査が可能な構造であり、保守性を高めた実践的な改修となりました。また、老朽化していた造り付けのコンクリート流し台を撤去し、新しい外水栓柱と流し台を組み合わせることで、復旧費用を抑えながらメンテナンス性を向上させています。
本件は、外観上の変化が一切ない状況でも、圧力計の動き・音反応・ガス反応といった複数の指標を組み合わせることで、原因箇所を確実に特定できることを示した好例です。砂質地盤や厚コンクリート構造といった「検知限界条件下」においても、非破壊調査を正確に運用することで、過剰な掘削を行わず確実な止水へ導くことが可能であることを実証しました。
今回の調査と修理の一連の工程は、井戸ポンプ設備の圧力挙動と配管構造の双方を正確に把握しながら進める必要性を改めて示した事例です。異常の兆候を「圧力計の針の動き」というシンプルな指標から読み解き、再現観測で裏づけることが、現場判断の信頼性を大きく高めます。
🟩 第8章|お客様の声と担当者コメント――“見えない漏水”を見つける安心感
🟦 お客様の声
「地面も濡れていないのにポンプが動いていたので、不思議に思っていました。まさか外流し台の下で漏れているとは思わず、本当に驚きました。丁寧に調べていただき、どこを直すのかを分かりやすく説明してもらえたので安心できました。外流し台も新しくなって、使い勝手が良くなりました。」
今回の現場は、地面が乾いたままの状態でポンプが作動するという、判断が難しいケースでした。厚いコンクリート構造の下で漏水が進行しており、ガス反応も弱かったため、通常の音聴調査では発見が困難な条件でした。それでも段階的な検査を重ね、確実に特定と修理に至ることができました。
造り付け構造の下で発生する微細漏水は、音・濡れ・気泡といった兆候がほとんど表れず、発見が遅れやすい特徴があります。今回のように、初期段階でポンプの動作異常に気づき、早めにご相談をいただけたことが、掘削範囲を最小限に抑えた修理につながりました。
🟦 担当者コメント
今回の調査は、「音も出ず、濡れもない」典型的な無音漏水の事例でした。トレーサーガス調査で反応が得にくい状況の中、音聴法を併用することで確実な判断ができた点が大きな成果です。また、修理後には井戸ポンプ設備特有の「非排出型圧損」も確認され、圧力挙動の理解を深める貴重なデータとなりました。
造り付けコンクリート構造をそのまま再現せず、玉砂利仕上げで再構築したことにより、今後の再点検や軽修理が容易になりました。外観を整えながら保守性を高める構造への変更は、再発防止と維持管理の両立において非常に有効です。
井戸ポンプ設備では、水が漏れていなくても圧が下がる「非排出型圧損」が起こることがあります。このような現象を正確に見極め、漏水との因果を整理することが、長期的な安定運転を支える第一歩となります。小さな違和感の段階でご相談いただくことが、最も効果的な対策です。
🟪 ご案内
井戸配管や屋外のコンクリート構造物下では、外観上の変化がないまま漏水が進行することがあります。音がしない・地表が乾いている・ポンプが時々動く・湯温が安定しない――こうした違和感が見られた場合は、調査を早めに行うことが大切です。初期段階で原因を特定すれば、修繕範囲を抑え、生活への影響を最小限にとどめられます。
当社では、多古町をはじめ、佐倉市・印西市・富里市・白井市・成田市・八街市・四街道市・栄町などの印旛地域を中心に、千葉県全域および茨城県南部でも、井戸ポンプ・配管・給湯設備の調査と修理に対応しています。
🟪 写真掲載について
本記事はお客様のプライバシー保護および現場特定の防止を目的として、施工中・修理後の写真を一部または非掲載としています。掲載している場合は、周囲が特定できない範囲に限定しています。周囲の建物や車両、門扉などから住所や個人が特定されるおそれがある場合は、写真を公開せず、文章による説明のみを掲載しています。
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竣工日
2025年4月
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場所
千葉県多古町
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施工内容
①漏水調査工 ②漏水修理工
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構造
木造2階建て住宅、軽量鉄骨造倉庫
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完工時築年数
36年
お客様の声
「地面も濡れていないのにポンプが動いていたので不思議でした。まさか流し台の下で漏れているとは思わず、本当に驚きました。丁寧に説明していただき、安心してお任せできました。」

