深井戸水中ポンプのオーバーホール/ 羽根車の分解清掃「テラル・25TWS-5.6-11」


↑分解状況(地上ユニット部)



◆はじめに

深井戸用水中ポンプをオーバーホールしました。

メーカーは、テラル(TERAL)です。

機種は、「25TWS-5.6-11」(三相200V用)です。



◆オーバーホールの経緯

使用年数4年の深井戸用水中ポンプから水が出なくなったため、ポンプを引き上げ、点検を行った結果、水中ポンプの羽根車部の不具合と判明し、水中ポンプの分解を伴うオーバーホールを行うことになりました。



◆水中ポンプの羽根車の不具合とは

井戸水の水垢が羽根車という通水路を塞いでしまったために、モーター部と羽根車部は動くが水が揚水されない状況でした。


回転することで水に力を伝達しながら水を汲み上げる役割を持つ羽根車部は、渦を巻く様な形状で通水路が狭く、複数個が重なる様に設けられています。そのため水垢が付着しやすい水質では、通水路が詰まってしまうことがよくあります。


※羽根車部が多いほど圧力が高まります。

※高圧力タイプのポンプは、羽根車部の枚数が多く、通水路が狭くなっています。

※大水量タイプのポンプは、羽根車部の枚数が少なく、通水路が広くなっています。



◆オーバーホールの目的

当ポンプを数年後、同じ状況になった時に仮使用できる状態にするために、点検清掃を行いながら整備を行います。



◆オーバーホールの内容

①地上部ユニット部の分解・清掃・点検・試運転調整

・構成部品を全て取り外し、水洗いを含めた清掃を行い、砂汚れなどを取り除く。

・ポンプの起動・停止に係る部品の点検(圧力スイッチ、フロースイッチ、圧力タンク)

・制御基板に繋がる電線コネクターを取り外し、接点部の腐食を取り除き、通電状況を良好に保つ作業を行う。

・各種パッキンの新調。


②水中ポンプ部の分解・清掃・点検・調整試運転

・井戸ポンプのモーター部と羽根車部を分解しながら状況点検を行う。

・羽根車と周辺部品全てを水洗い清掃し、水垢汚れを取り除く。

・モーター部と羽根車部を組付けながら点検と調整を行う。

・実際に水を汲み上げる試運転調整を行う。



◆オーバーホールするポンプについて

この井戸ポンプは、深井戸用の水中ポンプです。

水中ポンプは水中に設け、吸い込んだ水を地上へ押し上げる様に汲み上げます。

※ジェットポンプは地上にあるモーター部が水を吸い上げる様に汲み上げます。


①水中ポンプは、モーター部と羽根車部に大分され、連結棒で噛み合う様に結合されることでモーター部の回転が羽根車部に伝わり、水を汲み上げることができます。


互いに回転物のため、使用しない期間が長くあった場合、井戸水の水垢が原因で羽根車部に固着が生じて、動かなくなることがあります。井戸水の水質によっては、定期的に使用し、使用しない時間を長くしないことが大切です。


②吐出量一定式のポンプのためインバーター式とは異なり、モーターの回転数が基板で制御されることなく、常に一定で水を汲み上げることができます。そのため、蛇口の開栓数に応じて自動的にモーターの回転数が多くなり、吐水量と吐水圧が増す様なことは起きません。



◆地上ユニット部の大まかな作業の流れ

先ずは台座から電気部品、制御基板、アキュームレーター、その他周辺部品を取り外し、清掃、グリスアップ、注油、パッキン交換を行い、主要部品に移っていきます。


↓①作業前


↓②台座から構成部品を取り外します。



↓③構成部品の水洗い清掃(通水路・台座・各種フランジ部など)



↓④各種点検



↓⑤構成部品の組付け



◆代表的な作業について

①ポンプのON・OFF指令を出す圧力スイッチやフロースイッチ

分解清掃すると共に、設定部の錆を取り除きます。その後、ONとOFFの指令を出しているかの動作点検を行います。当部品は、錆の取り除きが難しい場合や試運転の中で動作が不安定であった場合は交換します。


※今回は、接点部にコゲが無く、接点部を上下させるバネの動きが良く、大きな劣化がありませんでしたので、部品交換には至りませんでした。


②ポンプを制御する基板

焼き付け故障部が無いかに留意しながらほこりを取り払い、汚れを取り除きます。その後、各コネクターを取り外し、設定部に錆が付着しているかの点検と接点清掃を行います。

これらの作業が終わりましたら各部品を組み合わせ、ポンプの絶縁抵抗測定を行います。適正値であることを確認し、試運転の工程へ進みます。


③揚水試験

水槽に貯めた水を井戸ポンプで吸い上げ、その水を水槽に戻していきます。

この水の吸い上げと吐き出しを繰り返しながら機械内部の汚れを取り除いていくと共に、モーターの音、吐き出される水の状況、ポンプの起動と停止状況、各接続部からの水漏れが無い事などを確認し、問題がなければ終了です。



◆水中ポンプ部の大まかな作業の流れ

先ずは羽根車部を固定している金具を取り外したあと、1段づつ羽根車部(外装部と羽根車)を取り外します。その後、ストレーナや軸部を取り外してモーター部を完全に切り離していきます。

その後の工程(点検、清掃、パッキン部へのグリスアップ、潤滑剤塗布など)で問題が無ければ、取り外した部品を組付けし直し、揚水試験に移ります。


↓①作業前



↓②分解点検中(羽根車とその外装部をモーター部と軸部から取り外す)



↓③組付けし直し後



↓④揚水試験


◆代表的な作業について

①羽根車部の分解清掃点検

・羽根車を外装部から取り出し、通水路に詰まった水垢汚れを取り除く。

・外装内部にあるゴムパッキン部へのグリスアップ


②軸部の分解清掃点検

・軸部を羽根車部とモーター部から取り外したあと、水洗い清掃を行い潤滑剤を塗布する。

・モーター部ととの連結部にある錆や汚れを取り除く。


③ストレーナ部の清掃点検

・ストレーナ部に付着した水垢汚れを取り除き、整形する。



◆オーバーホールした井戸ポンプの情報

・メーカー:テラル(TERAL)

・シリーズ名:深井戸用水中ポンプ TWS型

・型式:25TWS-5.6-11

・出力:600W

・動力電源:三相200V

・その他:定圧給水式

・使用年数:4年


◆交換した消耗部品

・各種パッキン

・各種ボルト


◆不具合があり、交換した部品

・アキュームレーター


◆接点部清掃や調整を行った部品

・圧力スイッチ

・フロースイッチ