疑問を解決/ジェットポンプの【異音】【水漏れ】【交換時期】


◆この記事で伝えたいこと。

この記事ではジェットポンプの「水漏れの原因」、「異音の原因」、「ポンプの交換時期」について、内部部品をご紹介しながら下記の順番でお伝え致します。


紹介の順番

1.「ポンプ本体からの水漏れ」について

2.「ポンプの音(異音)」について。

3.「ポンプの交換時期」について。



◆記事作成の経緯

当ジェットポンプの使用者からポンプが動く時止まる時大きな音が出る様になり、

「ポンプが壊れてしまうのではないか?」「ポンプを交換しないといけないのか?」などのお問い合わせを多く頂きます。また「ポンプ本体からの水漏れは修理できますか?」とお問い合わせを頂くこともあります。


そのため、水漏れしているジェットポンプ(地上部ユニット)をオーバーホールする作業を通じて、内部部品をご紹介しながら、お問い合わせにお答えしたいと思います。


◆オーバーホールする井戸ポンプについて。

①ポンプの仕様

・ポンプの種類:深井戸用ジェットポンプ

・メーカー:イワヤポンプ(岩谷)

・機種:JPS-300F-50

・出力:300W

・電源:単相100V


②ポンプの現状

・ポンプが動くとモーターの回転を伝える回転軸の周辺から水が漏れ出してくる。

・水漏れは羽根車という部品の中心部に設けてあるU字形のパッキン部から発生している。



(1)ポンプ本体からの水漏れについて。

①ポンプ本体からの水漏れとは?

ジェットポンプは地上に据え付けるモーターを使って水を吸い込む様に水を汲み上げます。このような機器の特性上、地上に設けるユニット機器の内部には常に水が貯水されていて、その中に羽根車という水を汲み上げるための部品が外装部に覆われる様に備わっています。

ポンプからの水漏れは、貯水された水が外部に漏れ出すことで生じます。


②どんな時に水が漏れるのか?

ポンプが動き、貯水部の圧力が高まるときに水が漏れ出します。

それは、モーターの高い回転力が回転軸を介して羽根車に伝わり、回転を繰り返すことで貯水部の内部圧力が高まるからです。


水漏れの流れ

ポンプが動く=モーターが回転する→羽根車が回転する→水を汲み上げる→貯水部の内部圧力が高まる→水が漏れる


③どこから水が漏れるのか?

ポンプが動いた際に生じる水漏れの多くは、水を汲み上げる羽根車という部品の周辺でおきています。


羽根車部には、モーターの回転を伝えるための回転軸という棒が差し込まれています。この部分には内部の水が漏れないようにゴム状のパッキンなどのシール材が回転軸の周囲に施されています。これらのシール材が劣化して密着不良をおこすと、水が漏れ出します。


また、羽根車は鋳鉄製の外装部に覆われているため、外装部の内側に生じた腐食が原因で破損や密着不良が生じると水が漏れ出します。


④水が漏れ出すとどうなるのか?

漏れ出すことで水圧や水量が不足したり、電装部品に水がかかることでショート故障の原因にも繋がります。モーター部に多くの水がかかると致命的になります。


水漏れの多くは機器の対応年数を超えてからおこります。そのため、水圧や水量の不足が生じても機器の能力低下を疑い、水漏れによるものと疑う使用者は多くはありません。また、機器の能力は使用年数に比例して徐々に低下していくため、気が付かない方も多くいます。


また羽車付近の回転軸には水切板という部品が設けてあり、内部からの水漏れを受け止め、モーター部などの電装部品に水が飛散しない様な措置が取られています。

しかし、水漏れの量が増すと周囲に飛散してショート故障に繋がりますので注意が必要です。


※外に漏れ出した水は地上部ユニットの台座に落ち、水抜き穴を通じて地面に流れ落ちていきますので、台座に貯まることはことはほとんどありません。


⑤水漏れは修理できるのか?

修理は可能です。

※大幅に部品を交換する必要があるため、新品の費用と大差がありません。



まとめ

分解後の写真を見て頂くと分かる通り、シール材がおさまっている箇所は腐食が進行しているため、シール材のみの交換では水漏れを止めることは出来ません。シール材のみの交換を行う場合は、シール材の接触面に付着している錆を傷が付かない様に全て奇麗に取り除く必要があります。


付着した錆の取り除きは現実的では無いため、羽根車の外装部を含めた高額な周辺部品を一新する必要があります。その場合、修理費用を含めると新品の価格と大差がありません。


今回のオーバーホールしたポンプは緊急時用に一定期間使用する目的であったため、最低限の錆除去清掃とシール材のみの部品交換で元に戻すことが出来ましたが、作業の過程で外装部の本体や固定ボルトが破損してしまい、現状復旧ができないケースもあります。


これらのことを考えるとジェットポンプからの水漏れ修理は得策ではありませんので、交換をお勧め致します。




↓分解前



↓分解後(全体)


(2)ポンプの音について。

はじめに

当ポンプは、羽根車という部品が水車の様に回転することで井戸から水を汲み上げられます。この羽根車は鋳鉄製の2つの外装部品に挟み込まれる様に設けてあります。

また羽根車の中心に設けられた穴には、モーターの回転を伝える回転軸が差し込まれ、モーターと羽根車が連動する仕組みになっています。


①停止するときに出る「キュー」音について。

8年~10年程使用すると「キュー」という音を出しながらポンプが停止する現象が出てきます。この現象は、ポンプの劣化具合の初期にあたり、原因はモーターの回転を羽根車に伝える各種部品が劣化したためです。


・代表的な原因は、

①モーターの回転を伝えるベアリングという部品の潤滑性能が低下した場合。

②モーターの回転を伝える回転軸に変形が生じた場合

③メカニカルシールやゴムパッキンといったシール材が劣化した場合。


・発生する使用年数は、

8年~10年



②動いてるとき、停止するときに出る、大きなガラガラ音について。

使用年数が10年を超えてくると、ポンプの動き始め動いている間停止するときにガラガラとした音がしたり、時折混ざってきます。

この音はポンプの劣化が中盤であること、交換の時期が近付いていることの合図です。


代表的な原因は、

①モーター回転軸の変形

使用を続けることでモーターの回転を羽根車に伝える回転軸に変形が生じて、羽根車の回転を均一に保てなくなることで、外装部との接触面から大きな音を出します。


②羽根車の外装部の内部腐食

羽根車部を覆う外装部の内部に付着した錆が原因により、羽根車との接触面から大きな音を出します。この音は症状の進行と共に大きくなり、最終的には乾いた大きなガラガラ音になります。たいていこの途中で「モーターは動くが羽根車が動かない」状態となり、水が汲み上がらなくなります。


③モーター周辺部品の劣化

モーターの回転を伝えるベアリング部の潤滑性能が低下することで、モーターが「動き始めるとき」、「動いているとき」、「停止したとき」に大きな音を出します。

使用年数と共に劣化する部品であり、異音の大半の原因はベアリングの劣化です。


・発生する使用年数は、

たいてい10年を超えてくると出始めます。

※詳細は、下記の「ポンプの交換目安について」をご参照ください



(3)ポンプの交換目安について。

・ポンプの音と使用年数から4段階で判断出来ます。

・交換目安は、使用年数よりもポンプの音に注意が必要です。



①ポンプ音の1段階目(発生年数の目安:使用年数8年~10年ほど)

動き始めたとき、動いているとき、停止したときの音が大きくなり、消耗や劣化を確認出来る様になります。


※メーカーの対応年数の8年は超えていますが、即交換の時期ではありませんが、経過観察が必要です。

※近所迷惑と感じる様な大きな音の場合は、使用年数が10年未満であっても交換をお勧め致します。


②ポンプ音の2段階目(発生年数の目安:使用年数10年~12年)

ポンプが停止したときに「キュー」という音がし始めます。交換時期が近づいていると判断してください。

※ガラガラ音が混ざっていた場合は、経過観察が必要です。

※ガラガラ音は、劣化状況が中盤から終盤であると判断できます。


③3段階目(発生年数の目安:使用年数12年超)

2段階目に加え、ポンプが動き始めたとき、動いているとき、停止したときの音が大きくなり始めます。この場合、交換時期が近いと判断して下さい。音の大きさによっては、動いている間に交換をお勧めしています。

※ガラガラ音が出ている場合は、動いている間に交換をお勧め致します。

※ガラガラ音は、劣化状況が終盤であると判断して下さい。


④4段階目(発生年数の目安:使用年数12年~15年)

3段階目に加え、ポンプが動き始めたとき、動いているとき、停止したときにガラガラ音がしたら劣化状況が終盤の合図です。動いている間に交換して下さい。最終的には羽根車が回転しなくなり、水が汲み上がらなくなります。


↓ポンプの外装部。この中に羽根車が収納され、水が貯水されます。



↓ポンプの外装部(中央上)と羽根車の外装部(中央下)羽根車(右下)

※羽根車は、羽根車の外装部(左下)とポンプの外装部(中央上)に挟み込まれる様に設けられます。

※羽根車やポンプの外装部は鋳鉄製のため、錆が付着します。

※鉄分の強い水質では、付着した錆がこぶの様に大きくなり、羽根車と接触して回転を妨げたり、異音の原因になったりします。

※錆と羽根車が接触することで、回転時に大きな音を出します。最終的には羽根車自体が回転出来なくなります。



◆まとめ

ポンプから出る通常時(購入当初)とは異なる大きな音は、ポンプの故障や破損に繋がります。井戸ポンプはモーターを使った回転物のため、回転のし始め、回転中、回転の終わりに音がするのはよくないことです。


その音の大きさや種類によって「直ぐには壊れない」、「直ぐに壊れてしまう」を判断出来ます。この通常時とは異なる音を見過ごさずに使用し、壊れる前に交換して頂けたらと思います。不明点がありましたらお問い合わせ下さい。

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